マリオRPG感想・評価|思い出は思い出のままにしておくべきだったのでは、と感じた一作

マリオRPGは、世代ではない自分にとっては「VIP先生」でBGMを知っているくらいなのと、”あの”スクウェアと任天堂がタッグを組んで、というくらいの知識のものだった。ただ、たまたまタイミングがあったので、リメイクが出る前に本作も遊んでみたが、その時点での感想は今の自分という視野で見たときに、物足りなさが残る作品であった。

さて、そんな過去の名作が現代でどのようになったのか。これは、はっきり言って何も変わっていなかった。グラフィックが変わっただろう、という意見もあるだろうし、その他戦闘システムも追加されたものがあるだろう、メニューかファストトラベルも楽になったし、オートセーブだってあるじゃないか。確かにそれはそうかもしれない。しかし、これらは全て”現代”のゲームであれば当たり前の要素でもある。言い換えれば、これらの要素が追加されたところでマリオRPGというゲームの体験は何一つ変わっていない。

そこにはある種の懐かしさ、あるいは安心感もあるのは間違いない。だから、決してこのリメイクが悪いといいたいわけではない。ただ、現代でやるには、どうしてもそこ以外に良い点が見つからなかったとも言える。結論を先取していえば、本作はそうした、ノスタルジックな気持ちに浸れる人であったりしないとどうしてもおすすめはできない。ワクワク感をもって本作を手に取れば、その期待は(おそらく)裏切られることになるだろう。

目次

当時としては画期的であっただろうバトルシステムと探索

冒頭の文章を読んで分かる通り、どちらかといえば今回は後ろ向きなレビューとなってしまうので、その点は注意されたし。

さて、まず最初に触れたいのはバトルシステムと探索要素だ。バトルシステムに関しては、通常のコマンドだけでなく、アクションのタイミングが成功すると攻撃力が上がったり、あるいは追加効果がでたり。本作ではそこに大成功が追加されて、通常攻撃を成功させると単体攻撃の余波が全体に広がったりもする。

ACが成功したときにチェインという要素の追加もある

このコマンド部分は当時としては画期的だったのであろう、と思わせるシステムでもある。言うまでもなく従来のコマンドRPGは一度コマンドを決定したらそこから先、プレイヤー側は介入しない。そういう意味で言えば、コマンドRPGにアクション要素を少し取り入れて、というような、気の抜けないバトルとなっている。最近で言えば、『Sea of Stars』は明確にこのバトル要素を取り入れていた。

ただ、これには欠点もある。ジャストのタイミングでアクションを成功させるというのが案外難しかったり、特に敵の攻撃をジャストガードする、という部分に関していうと、結構シビアな攻撃もあるので、これが上手かどうかで大きく難易度が変わってくる。とはいえ、マリオRPGは全体がかなり易しいので、それでも簡単だったりもするのだが。

とはいえ、これはあくまで個性の一部として捉えていいし、PSが要求されている部分でもあるので、欠点とはいったものの、同時に良い点でもある。そして、マリオの従来のアクション要素を少しでも取り入れたい、という意志の現れでもあるだろう。ただ、そうしたジャストタイミングでの回避やら攻撃やらは普通のアクションで個人的にはいいと思っているし、やはりこれは当時の、まだアクション部分が面白いゲーム、というのが少なかった時代背景もあるのではないだろうか。

これをリメイクしたからといって戦闘システムを刷新してしまえという話ではないものの、このバトルシステムを目当てに遊ぶというのはない、と言っていいだろう。1996年という時代の文脈によってのみ、本作の戦闘は楽しめたといえるかもしれない。とはいえ、『Sea of Stars』が好評を持って受け入れられていたり、それこそ本作の評判も悪くはなさそうなので、これは個人の好みの範疇かもしれない。ただやはり、戦闘の楽しさという点では、はっきり劣っている。

一番の難点は、やはりその簡単さにある。裏ボスまで全部クリアしたが、シリーズの追加ボスはギミックボスが多く、純粋な力と力の勝負は、低レベルで挑んだのでやりごたえはあったが、純粋な真っ向勝負というのは、搦手が使えなく、これはむしろターン制のアクションゲームなのでは?と考えたときに、じゃあ他のアクションのほうが楽しいんじゃないか、というのが頭によぎる。

そして、悲しいかな、このアクションコマンドの成否が戦闘システムの多くを握っているため、結局難易度の上げ方としては、そもそもアクションコマンドを無効にする(これはオリジナル版でもあった)技を敵が多く使ってくるか、ガード可能な攻撃の威力を上げるかくらいしかない。アクションコマンド無効に関しては、本作の戦闘システムの否定だとも思っているので、オリジナル版からどうなんだろうか、と思っていた部分でもある。次にガード可能な攻撃の威力をあげるというのも、今度はジャストガードゲーじゃん、と言われる危険をはらんでしまう。要するに、難しくしようにも、なら他のゲーム遊ぶよね、となってしまうしかないのである。

当時が遊べるクラシックミニ

とはいえこれに関しては、何度もいうが、2023年という、オリジナル版が発売されてから27年もの時を経て見える景色だ。当然、当時としては画期的であったろうシステムだったのかもしれない。とはいえ、コマンドRPG自体の面白さではもっといいものが個人的にはあるし(全員がそうだとは言わない)、アクション単体でみたときも、より面白いと思えるものがあった。

ただ、技くらいはもう少し増やしても…と思うが、RPG初心者に向けているだろうから仕方がないのかもしれない。当時のCMも、やったことない人向けに、というような内容だったので、この点は自分がマリオRPGに求めてはいけないものを求めてしまっているのかな、とは思う。

もしかしたらこの点はアクションにこそあるのかもしれない。というのも、技が増える=アクションも増えるわけで、全部が全部タイミングゲーさせるわけにもいかないだろう。また、技のバリエーションでゲームの戦略を担保しているのではなく、アクションで担保する必要もあるのだろう。結果として、コマンドRPGの長所である、スキルの組み合わせという奥行きが消されてしまっているのではないか。

最後にもう一つ戦闘システムに一言するなら、マリオは外したかった。これくらいはリメイクでも期待していたのだが、マリオRPGというタイトルだし仕方ないか…と思いつつ、マリオが外せたらなぁ、と思う場面がいくつもあったので、この点は明確に悪い部分の一つだ。自分の場合だと、クッパ×ピーチ×ジーノがメインパーティになって、クッパをマロに入れ替えるかしておそらく遊んでいた。全体的に、マリオが持つ役割がシンプルなアタッカーの割には…というものなので、うーん残念。    

次に探索部分に関して。これはマリオのアクション要素を頑張って活かそうとしているのは分かる。とはいえ、それこそ任天堂作品で言えば、『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』のような、探索部分で傑作どころか歴史に残る名作クラスの作品がでてしまっている。当時を懐かしむアクション要素のある探索として一定の評価はできるものの、個人として、どうしてもそれ以上の評価にはできない。

ストーリーは全く変わらない

ストーリーに関しては、正直元からあってもなくても変わらない要素なので、この点に関しては特に言いたいことはない。そもそも、マリオシリーズの文脈の中で、マリオ、ピーチ、クッパが一緒に戦う!という夢の共演、そしてそこにスクウェアがタッグを組んだ、というようなものでしかない。

なのでストーリー自体評価するとかしないとかの位置に存在していない。逆にいうと、それほどあっさりしている部分なので、ストーリーがあろうがなかろうが評価が変わらない。

一方で、原作に思い入れのない人間にとっては正直いってストーリー部分は丸々不要とも言えるものであるのにも関わらず、ムービースキップや、長い長い会話を見せられるのは苦痛でしかなかった。

これにはマリオが好きだとかいう要素も関係してくるかもしれないが、ストーリーでなにかを訴求するというタイトルでもないのだから、スキップや早送りくらいはせめて実装してほしかった。ここはかなり残念な部分でもある。

もうスイッチでは厳しいと(何度も思っているが)感じる部分も

決してこれは本作の問題点というわけではないものの、フレームレートが露骨に落ちている部分であったり、ロード時間も短いとは言えないのは(長くはないが古い作品ということを加味したときにはもっと短くていい)まるっきり評価ができない。RPGなので、フレームレート部分くらいは許容してあげようとは思うが、やはりカクついてるな、と思うと心に冷たい風が吹いてしまう。

めくるたびにロードが挟む(マップまでロードしてるからかもしれない)

特にモンスターリストに関しては結構重く、なにかんがえてるのが一つの売りにもなっているのに、ページめくりのたびに一瞬のロードを挟む。これは結構厳しい。ちなみに、RやLでページめくりができるが、このことがモンスターリストに書いていないのは不親切だと思うので、今からでも追加すべきかなとは思う。

スイッチがこれだけ普及しているし、面白いゲームがあるのも理解している。ただ、肝心のゲーム体験を、ソフトではなくハードが足を引っ張っていると感じるソフトが多いからこそ、それを思うたびに残念になってしまう。本作はまだ許容できる範囲だが、1996年の作品のリメイクであるにも関わらず、フレームレートの低下やロード時間を嘆く必要があるというのはなんとも心苦しい。

思い出のまま閉まっておくか、そうと理解したプレイが必須かもしれない

以上、本作には個人的にはあまりハマることができなかった。加えて、6500円という値段に比して、自分が裏ボスまで倒したデータを見ると10時間しかプレイしていなかった。かくし宝箱も拾って、一通り遊んでこれだから、ボリュームははっきりと少ない。これは、オリジナル版からの懸念点でもあったが、これよりも遊べるゲームがたくさんあることを考えると、若干お高めかなと思わざるを得ない。

ちなみに、簡単すぎるといった戦闘も、裏ボスまで行くと多少歯ごたえがある。とはいえ、これは多少に留まり、最強の裏ボスとしてでてくる敵も、最初のターンで倒されさえしなければどうとでもなる(何度かやって、最初のターンの攻撃が最も苛烈になるよう設定されているようだった)難易度で、逆にいうと、その最初のターンをしのぎきれるだけのHPがあれば全く問題なくクリアができてしまう程度のものだった。

その他ギミックボスもいたが、ギミックボスなので謎解きと同じだ。謎さえ解けてしまえば簡単で、とはいえこれは本編の遊びから外れている部分(謎解き要素がという意味)だったので、個人的にはあまり楽しい戦闘とは言えなかった。

また、ここは好みの話かもしれないが、グラフィックはオリジナル版のほうが味があったように思える。当時はあれが3Dグラフィックですごい、というような感じだったようだが、今の目線から見るとあのグラフィックはむしろノスタルジックな雰囲気を醸し出せている。本作は、グラフィックがなまじキレイになってしまったばかりに、グラフィックの郷愁が薄れてしまったように思える。

まぁこの点に関しては、クリスタラーが3Dが云々といっているので順当な進化と認めるべきなのかもしれないが、ここまで愚直にオリジナル版通りのリメイクをしているのなら、いっそ振り切ってノスタルジックを売りにした作品にしてもよかったと思わなくもない。

全体的に、オリジナル版を尊重したリメイクとしては及第点以上の出来栄えだ。これは間違いない。一方で、当時を懐かしむ余地がなく、ゲームに楽しみを求める人にとっては、今あらためて本作をプレイする価値は限りなく低い。本作は思い出は思い出のままに、あるいは思い出をそのまま楽しむ作品として受容すべきものであって、過去の名作と意気込んでプレイするにはあまりにもゲームの選択肢・楽しみが増えてしまった。

思い出というスパイスを効かせて始めて本作は楽しめる作品になる。あるいは、昨今のRPGがむしろ複雑だとか、もっとシンプルなものがやりたいという人にはいいかもしれない。しかし、現代という視界から本作を眺めるとき、少なくとも自分自身にとっては、本作は視野に入ることはないだろう。

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