都市伝説解体センターネタバレのみの感想

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都市伝説解体センターネタバレのみの感想

”噂”=SNSやネット社会と都市伝説というのをやりたいのは伝わった

都市伝説解体センター。都市伝説を調査し、そしてそれを”解体”したら、実は人の事件だった。

が、そうした都市伝説が生まれる背景やSNSやネット社会の中で、噂はどんどん増殖していき手のつけようがなくなってしまう。都市伝説を取り扱っている本作は、都市伝説という言葉が示しているような得体のしれないもの・噂、オカルトじみたものを解体し、つまびらかにする。

そして本作の最後もまさしく”解体”することになる。しかしそれは都市伝説ではなく、噂そのものの解体(如月努事件)、そして個人情報の解体、という形での決着となった。グレートリセットとは、関係性そのものをリセットした、と言い換えてもよいだろう。

噂が独り歩きして一人の人間を殺害するまでに至るのは、なにも都市伝説解体センターの中だけではなく、現実世界でもすでに起こっていることでもある。都市伝説という昔ながらのものを扱いながら、テーマとしては現代性を帯びたものとなっており、これをしたいのは伝わった。

伝わったが、さて、最終話を見る限りだとグレートリセットをし海外に逃亡したあざみだったが、また新たに拠点を構えているところを見ると、うーんなにが見せたかったのかな、というのは正直なところ。

都市伝説のような無害だったはずの噂が独り歩きし、実態の持たなかったものがある種の力を帯びたものとして現前するようになった。しかしあざみの起こした行動すらも”非解決事件”として国に隠蔽されて、また一つの都市伝説となってしまった…というオチに見える。

もしかすると、都市伝説は根も葉もない噂なのではなく、解体したら今回のあざみが起こしたような事件にたどり着く、実態性のあるものなのかもしれない。ということをあるいは伝えたかったのかもしれない。だとしたら、自分の読み方は間違っていて、もっとエンタメとして本作を楽しむべきだったと大いに反省すべきところである。

エンタメとして受容しなかった自分に問題があり、あぁこういうオチね、となってしまったのは不徳のいたすところではある。ただ、個人としては本作にもなんらかの主張が見たかったところであった。というのも、噂・ネット社会の醜さをのみ描き、それをグレートリセットしたあゆみだったが、ただそれだけが目的だったのだろうか。

彼女がグレートリセットを行ったのは、5ソサエティという集団に対するものだけでなく、兄である如月努を追い込んだSNS、噂、言い換えればネット社会に生きる全人類に対するものだった。

しかしグレートリセットで行われたのは、秘密の暴露というもので、秘密の暴露が如月努の殺害への復讐というのはいまいちピンとこないし、彼女が天才的な頭脳の持ち主であればそんなことは気がついていたようにも思える。如月努を死にまで追いやったのはSNSにおける悪意、あるいは無責任性である。あるいはそもそも悪意ではなく、ただ娯楽として消費していただけかもしれない。

彼女がすべきだったことは、グレートリセットというものでの個人情報の流出ではなく、責任の主体を常に自分自身に負わせるようなものを作り上げるということでしかなかっただろう。SNSにおける凶暴性・加虐性・暴力性には大いに責任という所在がはっきりしないのが関係しているだろうと自分は思う。

もちろんそれ以外にも色々あるし、迷惑系youtuberなんかは顔出ししてても横暴な振る舞いをしているのだから、一概にこれだけが原因ともいえない。ただ、SNSが作中でも示されていたように、無責任さをどんどんと助長していくものでもあるのは間違いないし、思考を奪うものであるのも間違いないだろう。というのも、ネット世界ではあまりにも情報が速すぎて、とてもではないが一つ一つの精査は無理難題だ。立ち止まれば友人との会話にはわからない言葉が横行し、一人取り残されることになるだろうし、消費のスピードもあっという間だ。

となれば、彼女の起こしたグレートリセットは、結局のところ目的がいまいちはっきりしなかった。確かに秘密をつまびらかにした、という意味で、能面ではいられなくなった、という理解もできなくはないし、如月努を殺したのは大衆ではあるものの、大本をたどれば非解決事件、要するに国そのものの秘密であった。というふうにあゆみが捉えたのかもしれない。

ネットで秘密を秘密のままにしておけなくなれば能面でいられなくなり、人はネットでも主体を獲得する。ただそれは人の意識の根本を変えたわけではなく、パノプティコン的な相互監視社会になっただけのことで、グレートリセット、というのはちょっと違う気もするし、SAMEJIMA管理人である彼女自身の秘密が暴かれていないし非解決事件として都市伝説化してしまった以上、彼女の目的は今自分が考えていたことではなかったように思える。

むしろ問題の置き方としては、SNS・ネット社会における明らかな消費の速度の速さだろう。SNSの誹謗中傷で自殺した芸能人の名前を、今言える人はどれくらいいるだろう?少なくとも自分は言えない。私は言えるよ、という人も当然いるのはわかっているものの、僕が言いたいのはそういったことではない。情報の消費の速度そのものだ。このような大事件でなくても、ほんの数ヶ月前に流行っていたものはあっという間に消費され、消えていく。直近で言えば猫ミームなんてまさしくそれだ。SNSにおける、如月努を犯人に仕立て上げた人は、野村の妹が語っていたように、7年前とはいえ誰もそれを話題にしなくなった。一方で、鮫島事件のようにないものをあるというようなことすら起こり得る。そのようないびつな空間に対する断罪として、あゆみのグレートリセットが一体どのようなことをしていたのか。自分にはいまいち腑に落ちなかった。感想なり漁ってみて、いいものがあれば自身のものをアップデートしたいなとは思う。もしよかったらコメントしてこうじゃない、とかも言ってもらえると嬉しいです笑

終盤の展開も結局わからずじまい

また、終盤の展開もちょっとわからないところがあった。まずジャスミン。彼女が怪我をしたが、彼女を害するのはあざみあるいはあゆみだとしても望むところではないと思う。が、話の都合上ジャスミンは退場してほしかったというのもわかるので、そこはあゆみが機転を利かせて彼女を害さずに、ナターシャサインを使ってなんらかの手段でジャスミンを拘束する、というように持っていってほしかった。あそこはまず彼女の行動に対する疑問点の一つ。

さらに、ジャスミンはSAMEJIMA管理人の素顔を見たが、それは一体誰だったのだろう?自分の記憶違いでなければそれは明かされていなかったとおもう。あれは巡屋のような風貌をしていたあゆみだったのだろうか。が、5ソサエティの発言を見ると、どうにも彼・彼女らを誘拐したのはあざみだと認識しているようだったから、巡屋の顔が違うというのは演出として捉えていいと思う。そうなるとジャスミンが見た相手は誰だったか疑問が残る。SAMEJIMAの協力者だったら、しかしあのような発言はしないだろうし。そもそも、最後開発センターであざみを確保しろ!のような発言をしていたから、あの場でみたのはあざみではなかったのは確定している。

また、あざみが同一人物であった、というのも、一応ドッペルゲンガーの話でも伏線は貼ってあったし、明らかに悪いとは言わない。ただ展開としては強引だったと思う。そもそもジャスミンは都市伝説解体センターに潜入したとはいっておきながら、それまで巡屋に一度も会っていなかったのもちょっと不思議だ。なぜなら彼女は巡屋を調査するために潜入していたのに、その彼自身とは出会っていなかったり、あるいはセンターの詳細を確認していなかったのは特殊部隊としては疑問が残る。

同一人物であったというのに戻るが、あざみを結局どうしたかったのかもよくわからない。あゆみは彼女を作り出したとしていたが、なぜそんなことをする必要があったのか(語られていたらど忘れしてますすみません)。正直トリックありきで進められたネタかな、というのは否めなかった。

恐らく自分がこうも引っかかっているのは、あゆみの一番の動機ややりたかったことに気がつけていないからだと思う。彼女の動機自体は分かるし、SNSをなんとかしようとしたのもわかるが、グレートリセットの手段自体がやはりピントきていないせいで、あゆみがなにをしたかったのか、あざみという人格を作ってなにをさせたかったのか、というのがわからずじまいだ。そもそもあゆみがあゆみ自身として活動していても、彼女の正体は公安にはバレていなかった。あれはあざみもといあゆみが公安に協力した結果、正体がバレたのであって、身バレのリスクはなかっただろう。

というわけで、全体的な雰囲気は個人的には結構好みだったものの、いまいち最後の最後でノリきれなかった。もう少し設定の掘り下げが欲しかったかなぁ。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 拙い考察ですが
    >あゆみの目的
    結局の所彼女がしたかったのは革命だとか世の人の意識改革だとかではなく、復讐、もっと言えば八つ当たりでしか無かったのでは無いかと思います。不特定多数に追い込まれた兄の為に、不特定多数を同じ立場に追い込んだのではないかと。

    >ジャスミンが見た顔
    恐らく配信の際のお面では無いかと。廻屋と直接の面識が無い事、5Sの反応的にあずみ=廻屋は見て分かる事を考えると、ジャスミンから見た廻屋は配信時の姿以上の情報は無かったのではないかと思うので

    >あずみをどうしたかったのか
    1話冒頭のセンター内の本棚に「鬱による抑圧と解放」「精神分裂との向き合い方」という本があります。ジャスミンたちはあゆみが計画の為にあずみを(意図的に)作ったと考察していますが、本当は精神的に追い込まれてあずみという人格が生まれてしまい(あゆみが思う理想的な妹像だったのかもしれません)、後からそれを計画に利用したのではないかと思います。

    • コメントありがとうございます。
      >恐らく配信の際のお面
      これが一番可能性としてはありえるんですかね~あの中にさらにお面かぶってるのもちょっと間抜けな感じがしますが、そうじゃないと流石に説明できなさそうですね。

      >1話冒頭のセンター内の本棚に「鬱による抑圧と解放」「精神分裂との向き合い方」という本があります
      なるほど、これは見逃していました。精神的に追い込まれていたのは確かだったと思います。
      ただ、これを自覚はしていて、自分を理解するように仕向けた廻屋の動きはなんだったのか。
      実際のところ、ゲーム中だと廻屋とあゆみとあずみのSAMEJIMA管理人が同一人物、という説明しかなかったと記憶していますが、
      廻屋とあゆみは(恐らく)同一人格だと思ってはいて、そうなると最後のアイオープナーの最大の理解者です!というのは、なにを理解してもらいたかったんだろうな、というのが実はまだ良くわかっていません。
      止めてほしかったのだとすれば、アイオープナーが成功した時点で目的は果たされているわけですし、仮に最大の理解者だったとしてもそれは自分自身の別人格なのであって、うーんなんだろうなぁ、と笑
      都市伝説、ひいてはオカルトを解体したら生きている人間や権力者による隠蔽などがあって、それをつまびらかにする。というところまでは良かったんですが、SAMEJIMA管理人もある意味秘密・都市伝説的な感じですし、
      やっぱり自分が記事中に書いてあるようにもっとエンタメとして楽しむべきオチだったのかなぁ~とか考えちゃいますね。

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